2019/11/28

NYT:201909のベストセラー

NYTimesの月間ベストセラー(ビジネス書)2019年9月のランキングを発表!

今回はNo.7の"Kochland"を紹介します。


No.1(↑)

DARE TO LEAD

by Brené Brown
Random House

内容などについては2018年11月の投稿を参照してください。


No.2(↑)

RANGE

by David Epstein
Riverhead

内容などについては2019年7月の投稿を参照してください。


No.3(↓)

ATOMIC HABITS

by James Clear
Avery

内容などについては2019年1月の投稿を参照してください。


No.4(↑)

OUTLIERS

by Malcolm GladwellBack Bay
Back Bay/Little, Brown

先月に続きランクイン。
勝間和代さんが強くオススメしていたこともあって、ご存知もしくは既に読んだ人も多いのではないでしょうか?
原作は2009年に出版されており、ロングセラーと言えます。


No.5(↓)

BAD BLOOD

by John Carreyrou
Knopf

内容などについては2018年8月の投稿を参照してください。


No.6(↑)

I WILL TEACH YOU TO BE RICH, SECOND EDITION

by Ramit Sethi
Workman

3ヶ月連続ランクイン。


No.7(New)

KOCHLAND

by Christopher Leonard
Simon & Schuster

初ランクイン。
今月は個人的に「ナニ?」とさっぱりなんのことだか検討のつかなかった本書を掘り下げてみます。
まずはamazonの内容紹介です。

Shortlisted for the 2019 Financial Times & McKinsey Business Book of the Year Award
“Superb…Among the best books ever written about an American corporation.” —Bryan Burrough, The New York Times Book Review

Just as Steve Coll told the story of globalization through ExxonMobil and Andrew Ross Sorkin told the story of Wall Street excess through Too Big to Fail, Christopher Leonard’s Kochland uses the extraordinary account of how one of the biggest private companies in the world grew to be that big to tell the story of modern corporate America.
The annual revenue of Koch Industries is bigger than that of Goldman Sachs, Facebook, and US Steel combined. Koch is everywhere: from the fertilizers that make our food to the chemicals that make our pipes to the synthetics that make our carpets and diapers to the Wall Street trading in all these commodities. But few people know much about Koch Industries and that’s because the billionaire Koch brothers have wanted it that way.

For five decades, CEO Charles Koch has kept Koch Industries quietly operating in deepest secrecy, with a view toward very, very long-term profits. He’s a genius businessman: patient with earnings, able to learn from his mistakes, determined that his employees develop a reverence for free-market ruthlessness, and a master disrupter. These strategies made him and his brother David together richer than Bill Gates.

But there’s another side to this story. If you want to understand how we killed the unions in this country, how we widened the income divide, stalled progress on climate change, and how our corporations bought the influence industry, all you have to do is read this book.

Seven years in the making, Kochland “is a dazzling feat of investigative reporting and epic narrative writing, a tour de force that takes the reader deep inside the rise of a vastly powerful family corporation that has come to influence American workers, markets, elections, and the very ideas debated in our public square. Leonard’s work is fair and meticulous, even as it reveals the Kochs as industrial Citizens Kane of our time” (Steve Coll, Pulitzer Prize–winning author of Private Empire).

早速和訳してみます。

Financial Times/McKinsey Businessが選ぶ「今年(2019年)の本大賞」の最終候補作品
“素晴らしい!…アメリカ株式会社について書かれた本の中で最高の作品” —Bryan Burrough, The New York Times 書評

Steve CollがExxonMobilを取り上げてグローバリゼーションを語ったように、Andrew Ross SorkinがToo Big to Fail(大きすぎて潰せない)と気を使ったWall Street(ウォール街)を語ったように、Christopher Leonardの"Kochland(本書)"は世界最大級の民間企業(非上場企業)がいかにしてそのように巨大になったかを近代のアメリカ株式会社の観点からも語っている。

Koch Industriesの年間売上高はGoldman SachsFacebook、そしてUS Steelのそれの合計よりも大きい。Kochの事業範囲は広範にわたり、食料生産のための肥料からパイプや合成化合物であるカーペットやおむつなど化工品、ウォール街での商品取引される全ての商品にまでおよぶ。一方でほとんどの人はKoch Industriesについて知らず、それは(創業一族である)Koch兄弟が知られることを好んでいないことがその理由である。

50年もの間、CEOであるCharles KochはKoch Industriesを、超長期的な収益確保を見据え、表立たないようひっそりと経営の舵取りをしてきた。彼は天才的なビジネスマンと評価できる:稼ぎに対する忍耐、失敗から学ぶ能力、従業員が自由経済の冷酷無比さに対して尊敬の念を抱く気持ちを高める決断を行うこと、そして業界慣習の破壊者である点において。これらのビジネス戦略は彼そして彼の兄弟であるDavidともにBill Gatesよりも裕福にたらしめた。

しかし、他にも語るべきストーリーがある。もし国内の労働組合がどのように閉鎖されていったかが知りたいのであれば、どのように収入格差がさらに広がっていったのかを知りたいのであれば、気候変動に対する取り組みがどのように失速したかが知りたいのであれば、どのようにアメリカ株式会社がインフルエンス業界(※広告、PR業界?)をお金でコントロールしたかを知りたいのであれば、黙ってこの本を手に取ろう。

7年間にわたるマーケティング活動の結果、Kochland(本書)は、「深い調査による調査と卓越した文筆力という輝かしい特徴を持った作品だ。この大作は強力な家族経営企業(この企業はアメリカ国内の労働者、市場、選挙そして街角で交わされるアイデアにも大きな影響力を発揮する)の成り立ちに関する深い内情に誘う。

Leonard(著者)の著述は公平かつ細部にまで行き届いていて、Koch家を現代の産業界のCitizens Kane(市民ケーン)とすら描いている。」 ("Private Empire"でピュリッツァー賞受賞したSteve Coll).

Koch Industries(以下、Koch)という会社ご存知でしたか?残念ながら知りませんでした。したがって、NY Timesのランキングで書籍タイトル("KOCHLAND")を見てもまったくピンと来ませんでした。

しかしながらamazonの内容紹介を読んでみるとすごくこの企業に関心がわいたのです。

内容紹介のチカラを大いに感じさせられました。そのチカラを拙い和訳で伝えられているかはいささか疑問ですが、興味を持ったらぜひ原書(対象となる企業の認知度などからおそらく和訳版は出ないことでしょう)をぜひ手にとってみてください。

さて、興味を持った点をいくつか。知名度としては決して高くないにも関わらず、その売上規模は内容紹介にあるようにGoldman Sachs、Facebook、US Steelsを足したのと同じ規模とのこと。

WikipediaのKoch Industries(日本語)を見てみると、2016年の年間売上高は1,150億ドルと記載されています(非上場企業のため、財務データは公開されていないためWikiから引用しています)。

そして、2016年の売上高を各社調べると、GoldmanSachs(306億ドル)、Facebook(88億ドル)、US Steels(106億ドル)であり、合計500億ドルに過ぎないことがわかります。

本作で3社売上高合計、Koch売上高それぞれどの時点を言及しているかは本文を読まない限りはわかりませんが、2016年に限ってはKochが3社合計の2倍も稼ぎ出していることがわかります。


表に出ないようにしているとのことでしたが、YouTube動画などSNSには積極的に取り組んでいるようです。

同社のPR的位置づけと見られる動画を紹介します。




また、さらに興味が湧いたのが、日本への進出状況です。

同社の公式サイトを確認すると、下記画像の4社(Kochの各子会社)が進出していることがわかります(各社の事業内容紹介は割愛)。

全世界12万人の従業員のうち、約1,800人が日本の下記4社で勤務しています(意外に周りで同社に勤務している人がいるかもしれませんね)。

謎の企業がどのように社会へ影響を及ぼしているのか、なぜここまで表に出てこないかなど、興味はつきません。

ぜひ手にとってみたい1冊です。


No.8(↑)

THINKING, FAST AND SLOW

by Daniel Kahneman
Farrar, Straus & Giroux

極めて簡素ではありますが、内容などについては2018年8月の投稿を参照してください。
和訳版は『ファスト&スロー あなたの意思はどのように決まるか?』


No.9(↓)

EXTREME OWNERSHIP

by Jocko Willink and Leif Babin
St. Martin's

内容などについては2019年02月の投稿を参照してください。


No.10(↑)

DOPESICK

by Beth Macy
Simon & SchusterLittle, Brown

内容などについては2018年9月の投稿をご覧ください。



今回は"Kochland"を取り上げました。

日本にも表立っては出てこないものの、実は社会に大きな影響を及ぼしてる企業があるのではないでしょうか。

「日本 非上場 リスト」などで検索すると意外な企業が出てくるかもしれませんし、そのリストにすら挙がってこない企業すらあることでしょう。

"Kochland"を取り上げてみることで、企業と社会とのあり方とは?について関心が少し湧いた今回のエントリーでした。

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